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香川県で「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例議案」可決 施行は今年4月1日から プレイ時間上限・時間帯制限等を守るよう努めなければならないことに

香川県は、2020年3月18日(水)に、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例議案」を可決・成立し、2020年4月1日から施行すると発表した




本条例は、ネット・ゲーム依存症対策という名目のもと定められた条例。



香川県在住者への影響

PDFをご覧いただくと様々な項目があるが、特に物議をかもしているのは、以下に引用した、1日辺りの利用時間上限(平日60分まで、休日90分まで)と、利用時間帯制限(義務教育終了前の子どもは21時まで、それ以外の子どもは22時まで)を守るようにさせるよう努めなければならない点にある。

(以下、該当部分の第18条引用)

第18条 保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等について、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行うものとする。

2 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症 につながるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の使用(家族との連絡及び学習に必要な検索等を除く。)に当たっては、義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめることを目安とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければならない。

3 保護者は、子どもがネット・ゲーム依存症に陥る危険性があると感じた場合には、速やかに、学校等又はネット・ゲーム依存症対策に関連する業務に従事する者等に相談し、子どもがネット・ゲーム依存症にならないよう努めなければならない。(財政上の措置)

つまり、「勉強と遊び、きちんと自分で区切りをつけて、学ぶ時は学ぶ、遊ぶ時は遊ぶとできる子供」も、「ゲームで遊ぶことを自分の意志で全くやめることができない状態が年単位などの長期間続く、ごく一部の子ども」も、一律で制限をかけることになるという点が大きな問題と思われる。

子どもの為を思うのであれば、一律規制ではなく、「まず、子供が自制をすることができるようになるように、親や周囲の大人として手助けをする。」「健康を害するなど、依存状態が著しく強い状態の子どもに関しては、その個人個人に応じた、適切な対応を行う」ことが大事になるのではないだろうか。





香川県外への影響

先ほど説明した「香川県在住者(子どもとその保護者)」以外にも、ゲーム事業に関連する事業者にも影響が考えられる。

以下、PDFの該当部分の「事業者の役割」より引用。

(事業者の役割)
第11条 インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)に供する事業又はコンピュータゲームのソフトウェアの開発、製造、提供等の事業を行う者は、その事業活動を行うに当たっては、県民のネット・ゲーム依存症の予防等に配慮するとともに、県又は市町が実施する県民のネット・ゲーム依存症対策に協力するものとする。

2 前項の事業者は、その事業活動を行うに当たって、著しく性的感情を刺激し、甚だしく粗暴性を助長し、又は射幸性が高いオンラインゲームの課金システム等により依存症を進行させる等子どもの福祉を阻害するおそれがあるものについて自主的な規制に努めること等により、県民がネット・ゲーム依存症に陥らないために必要な対策を実施するものとする。

3 特定電気通信役務提供者(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律第137号)第2条第3号に規定する特定電気通信役務提供者をいう。)及び端末設備の販売又は貸付けを業とする者は、その事業活動を行うに当たって、フィルタリングソフトウェアの活用その他適切な方法により、県民がネット・ゲーム依存症に陥らないために必要な対策を実施するものとする。


これを読む限り、香川県民の子どもが使う・遊ぶものを作っている・運営しているものは、本条例に影響を受ける可能性がある。





今回のパブリックコメントの運用方法に関する問題点について

本日までの経緯として、2020年2年1月23日(木)~年2月6日(木)に意見募集が行われたパブリックコメントで寄せられた意見について、日本共産党香川県議団と自民党議員会(※1)が共同で公開を求める申し入れを行った。


※1)香川県の自民党には、自民党県政会(20人)と、自民党議員会(8人)の2会派がある。
この申し入れを行ったのは自民党議員会。一方、規制派の中心的役割を担う大山一郎議員が属するのは自民党県政会となっている。

しかし、香川県議会議員の秋山ときさだ氏によると
(1)開示は検討委員のみ
(2)開示は、本会議後の18日13時〜19日17時の期間限定
(3)メモや口外は禁止

との回答があり、検討委員以外はパブリックコメントの全意見を見ることができないまま、採決に至ったとのことだ。


[参考資料]パブリックコメント募集時の記事




そして以下PDFが、採決前日である2020年3月17日に公開された、パブリックコメントで集まった意見の概要と、それに対する香川県の考え方を記した資料となる。



香川県公式サイトで公開されたパブリックコメントの結果概要では、寄せられた意見2615件の内、84パーセントにあたる2269件が「賛成」、16パーセントにあたる334件が反対意見となっていた。

一方、意見の内容(項目)で見ると、賛成意見は18項目、反対意見は428項目と、賛成意見は類似・同一の意見が多数存在したと思われる一方、反対意見は多種多様な意見・指摘があったことがうかがえるものとなっている。

パブリックコメントは、賛否の件数を集めることが目的ではなく、事前に条例案に問題が無いか・改善点は無いかなどの意見を求め、寄せられた意見をもとに問題を解消し、指摘に対応しない場合はその旨を論理的に根拠のあるデータともとに回答し、問題が全く解決できない場合は取り下げることに使うことが望ましいのではないだろうか。

香川県からの回答は、残念ながら問題解決・払しょくに繋がるものとはなっていない。




採決の結果

採決の結果だが、東京都大田区議会議員のおぎの稔氏によると、以下のようになった。






今後について

今回は香川県で条例が成立したが、香川県外のゲームに関する事業者にも影響が考えられる上、この条例に続く動きが全国に広がる危険性も考えられる。


また、今回香川県での動き(条例策定の検討過程の不透明さ、パブリックコメントの運用方法等)をめぐり、先日、一部議員から抗議声明が出されている。



さらに、全国の自治体で、香川県の条例には賛同しない、規制には慎重であるべき、一律規制はせずにプレイ時間は各家庭で話し合って決めるのが望ましい、と言った答弁を得ることで、一律規制に対するカウンターともいえる動きを見せる自治体・議員も増えてきている。





ゲームのプレイしすぎで健康を損なうようなことは避けるべきだが、どのようにプレイをするかは各個人・各家庭で決めることであるはずだ。

勉強と両立し、場合によっては勉強のストレス発散の一つとしてゲームと上手に付き合っている子ども一定数いると考えられる。

また、ゲームが引きこもりなどの原因とする方もいらっしゃるが、原因は別(いじめ、家庭環境、勉強についていけなくなったなど)にあり、その別原因により引きこもり状態になってしまい、部屋にいる状態でできることの一つがゲームである場合は、根本原因を解決しない限り、ゲームのプレイ時間を制限しても効果はないどころか、心の支え・新たな興味との出会いの機会の消失など、負の側面が増す可能性もある。

ゲームをきっかけに、新しいものに興味を示す、などということもよくあることだ。
「楽しい」ということの中には、その人(子ども)が興味がある分野・得意になる分野の種が眠っている可能性もあり、それが芽吹くことで、学びに繋がるという好循環を体験した方も多いだろう。(物事に興味を抱かせるきっかけとして、ゲームを含む娯楽はとても優れていると思われる)


以上お読みいただき、本件に対して思うところがある方は、まずはしっかりと情報を収集し、各地で自分ができる範囲で行動をして頂きたい。


そして何より、今回の件で疑問を感じている香川県在住で投票できる方、他の自治体にお住みの方で自分の自治体にこの影響が広がって欲しくないと考えている方、次回も選挙には行きましょう(※2)-。

※2)ただし、前回の香川県議会議員選挙では、9/13(約7割)の選挙区が無投票で当選となっている。
前々回選挙も、7/13が無投票で当選となっている。
まず、投票できる段階に持ち込むためには、立候補者を擁立しないとならないため、「まず投票で選ぶことのできる状態にする」ためには、できるだけ早いうちから準備が必要と思われる。
香川県議会議員選挙(2019年4月7日投票)(選挙ドットコム)
香川県議会議員選挙(2015年4月12日投票)(選挙ドットコム)





■以下、参考資料や報道資料を列挙する
香川ゲーム規制条例、検討委に聞く「議員すら見られないパブコメ」のおかしさ 「400件の反対意見」は県に届かなかったのか(ねとらぼ)

香川県ゲーム規制条例が可決へ 議論は密室、パブコメは議会前日にドタバタ公開(弁護士ドットコム)

子どものゲーム利用を1日60分以内に規制、条例可決へ…親の責務も明記、不登校原因と指摘(Business Journal)

香川ゲーム条例のパブコメ 市議が自作の記入用紙を配布(朝日新聞)



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※ゲームメーカー所在地の自治体は、税収・雇用の創出などの観点から、ゲームに寛容・理解がある可能性もありますので、一律規制に向かわないようにする活動の際の参考資料の一つとしてお使い下さい。